
もう不妊治療が辛すぎます。いつまで続けるべきですか?
ゴールが見えない不妊治療。でも妊娠するまで辞めれません。
不妊治療のやめどきを教えて欲しい。
こんな疑問にお答えします。
新常識!【最新の不妊症の定義とは?】以前より短くなりましたでも説明したように、1年間子供ができない場合は不妊と定義され、その割合は6組に1組にまで増加しています。
不妊治療をすれば必ず誰でも妊娠できるというわけではありません。辛い治療を長年続けてきたけど結局妊娠に至っていないご夫婦はたくさんいらっしゃいます。
- 不妊治療の辞め時を考えるきっかけにできる
- 一般的な不妊治療の辞め時を知ることができる
- 子供を諦めるという選択肢もあるということがわかる
子供を育てて一人前?古すぎる価値観
周囲の何気ない発言に悲しみ、苦しんだご夫婦もいることでしょう。不妊治療をしていると、友人であれ、両親であれ、その何気ない一言で心が壊れそうになることもあります。
「治療やめればすぐできるんじゃない?」
「子供を育ててこそ一人前だ」
「お子さんはまだなの?」
もちろん相手は傷つけるつもりなどさらさらないのですが、受け取る側に余裕がないことも重なって心に響いてしまうのです。
晩婚化が進んでいる日本。30代での結婚が増え、初産が30代後半に移行しています。もしここですんなりと妊娠しなかった場合、30代後半で不妊治療をようやくスタートすることになるのです。
そうなると、無事に妊娠したとしても奥様はおそらく40歳辺りでしょう。高齢になればなるほど妊娠率は低下していくことはそれ知りたかった!妊娠の確率・流産の確率まとめ【妊娠は確率論】で説明していますが、注意すべきはそこではありません。
高齢での出産は母体への危険と、胎児の奇形リスク・流産リスクが非常に高まってしまうという点です。
そういうこともあり、30代後半だから人工授精、40歳だから体外受精という考え方ではなく、できることなら早目に不妊治療に取り掛かるべきだと思います。
そしてここ数年で男性不妊というワードがようやくポツポツと日の目を浴びてきていますが、まだまだ浸透してはいません。
女性に対して発言すればセクハラ、マタハラと言われるような内容でも、男性だから気にしないだろう、大丈夫だろうと思われ、包み隠さず言葉を浴びせられます。
「子供を育ててこそ一人前だ。子育ての経験がある人こそ上にあがるべきだ」
これは私が職場で上の人から言われた言葉ですが、欲しくてもできない人にとっては非常に重たい言葉なんです。
どんなに頑張っても、どんなに良い成績を残しても、子供がいないから出世できないの?昇進しないの?なんて理不尽な考え方だと思いました。
不妊治療の経験がない人には不妊の辛さはわからない。とても悔しかったことを覚えています。
数年前、試験管ベビーという言葉が登場したように、生殖医療による出産が可能になったわけですが、今では20人に1人は体外受精という割合にまでなっています。
1クラスに1人はいるという計算ですね。それだけ不妊で悩んでいるご夫婦は世の中に多いということですし、当然子供を授かることができず、諦めたご夫婦もいるということです。
私はどうしても子供を諦めることができませんでしたのでたまにふと思います。お子供を諦めることができた人は、育児の経験がなくても、決して未熟ではないって。
不妊治療3つの辞め時
不妊治療を始める前に夫婦で話し合うべき3つのことでも説明しているようにどこまで不妊治療を続けるのかを決めることは非常に重要なことです。そしてそれは不妊治療の辞め時を夫婦で決めておくということです。
不妊治療はゴールが見えません。だから不安で怖いのですが、ゴールというのは妊娠するということであり、その先には無事出産を終えるというゴールがあり、さらにその先には育児を終えるところまで続いていきます。
しかし、不妊治療を経験したことのある人なら理解できると思いますが、妊娠するまでずっと継続してしまうものでもあります。
例えば、人工授精の確率は何%?【妊娠率の統計から辞め時は〇回である】でも解説していますが、人工授精は6回までに妊娠しているご夫婦が9割にもなります。
つまり6回までに妊娠しなければ、ステップアップをして体外受精・顕微授精の提案がなされるのが普通です。
しかし、6回目で妊娠しなかった夫婦は、もしかするとあと1回で妊娠するかもしれない、ちょっと休んでから3回以内に妊娠できるかもしれないと根拠のない自信でそのままの不妊治療を継続してしまう傾向があります。
早く子供が欲しいという気持ちは当然あるのですが、お金がかかるから体外受精はやりたくない、できれば人工授精までで妊娠したい、体外受精になると完全な人工だからそれで産みたくない、など理由は様々です。
とにかくなかなか諦められないんですね。それが不妊治療です。
だからこそ夫婦で辞め時を話し合っておく必要があるのですが、その辞め時になるタイミングは3つです。
- 治療費の上限に達したタイミング
- 治療時間の上限に達したタイミング
- 治療段階の上限に達したタイミング
治療費というのはお金です。金額で上限を定めましょう。例えば、個人で違いますが、新車1台分で不妊夫婦が子供一人授かれたら納得できる金額でしょう。
夫婦でいくらまでは不妊治療に費やして、それでだめだったら諦めようと決めておきましょう。諦めなくてもいくら使ったら次のステップへ進むという風にしてもいいと思います。
次に治療時間の上限ですが、これは分かりやすくいうと年齢です。今から〇年でもいいですし、奥様の年齢が40歳までと決めるのもいいでしょう。
年齢で不妊治療のリミットを定めるご夫婦は非常に多いのですが、42歳以降は確率が非常に低いものであることを十分理解してください。
「45歳を過ぎた場合、治療での成功割合は1%ほどです。1%しか可能性がないものを続けることは医療ではない。」こう話す医師もいらっしゃいます。
最後に治療段階での上限です。不妊治療は順にステップアップしていきます。
タイミング法→人工授精→体外受精→顕微授精となるわけですが、人によっては絶対に自然妊娠じゃないと嫌だとか、人工授精までしか我慢できないとか、金銭的な理由で体外受精は無理というご夫婦は意外と多くいます。
ですから体外受精1回やってだめだったら諦める、人工授精6回やってダメなら諦めるなど、ご夫婦で決めておく必要があります。
どこを上限に設定するかでご夫婦の取り組み方も変わってくることと思いますが、いずれにしてもしっかり夫婦で話し合わないといけません。
妊娠をゴールにするから辞められない
不妊治療をしているとこれがわからなくなります。妊娠するために行っているわけですから妊娠しないことには辞められないと思うのが普通ですよね。
正直ご夫婦で気が済むまでやり通せばいいとは思いますが、ずっと続けられるものではありません。
ですから必ず辞め時を決めておかなくてはいけません。不妊治療をしないことは後悔になりますが、続けることも後悔になることもあります。どこかでご夫婦が納得できる場所を作っておきましょう。
不妊治療は夫婦の話し合いというのは非常に重要で、話し合いによってお互いの価値観をすり合わせていく作業でもあると思います。それを怠ると夫婦喧嘩になって、最悪離婚にまで発展してしまいます。
子供を諦めるという選択
子供を諦めないといけないと分かった時、自分だったらどんな感情になるのだろうか。男だろうが女だろうが、狂ったように泣くのかもしれない。涙も出ず、ただ呆然として何もやる気が起きなくなるのかもしれない。
おそらく子供を諦めるきっかけになるのは金銭・心・身体の3つへの痛み全てがあるいはいずれかが許容範囲を超えた時だと思う。そんな時にふと、もう諦めようという気持ちになるご夫婦は少なくない。
諦めるということはとても勇気が必要なことだし、受け入れられた人を尊敬すらする。ただ本当の意味で受け入れた人は限りなくゼロに近いのだろう。ふとした瞬間や数年後、やはり諦められない気持ちが湧いて出てしまうのが人間だと思うからだ。
子供を諦めたご夫婦は不幸かと言われればそうではない。子供がいない人の特権として自由なお金と時間がある。逆に子供がいるご夫婦は幸福かと言われればそうでもない。子供がいることでしがらみも増える。
何を良しとし、何を悪しとするかもまた夫婦次第。
結局、夫婦で話し合って決めた着地点が一番納得できる場所になる。