
風邪をひいてしまい、これから子作り予定なんだけど今回はやめた方がいいかな?
高熱がでてしまい、精子に影響がないか心配です。
熱を下げる方法が知りたい。
こんな疑問にお答えします。
男性不妊の原因を調べると温度に関することが出てきます。男性不妊と温度はどういう関係があるのでしょうか?
- 精子は温度変化に弱いことがわかる
- 高熱を出した時の対処方法がわかる
- 高熱を回避することで妊娠の確率が高まる
精子は熱に弱い
精子は熱に弱いです。言い換えると精巣、睾丸は熱に弱いです。
卵子はお腹の中にありますが、精巣はお腹の外にありますよね?
これは精巣の温度を下げるための必然的な構造仕組みであると言われています。
精巣がお腹の中にある状態を停留精巣と言いますが、その場合は手術をして精巣をお腹の外に出すことが必要となります。
ここで心配と感じることは1度高熱が出てしまうと精子は死んでしまうのかという疑問です。
幼少期の高熱が精子に及ぼす影響
まだ幼少期に高熱が持続して発生してしまった場合、生涯精子形成に影響を及ぼしてしまうと考えられています。
男の子のお子様をお持ちのご両親は、お子様が高熱を発症してしまったら早めに熱を下げる行動を行うよう心がけましょう。
大人の高熱が精子に及ぼす影響
では大人になってからの高熱はどうか?
大人の場合、体の構造はしっかり発達し終わった状態ですので、高熱がでたとしても生涯の精子形成に大きな影響はありません。
しかし、一時的な精子所見を悪化させてしまいます。
高熱の後、精液検査をすると数も運動率も奇形率も通常に比べると悪い結果が出てしまいます。
妊娠を考えている場合、その前後の熱には十分注意が必要です。
精子は寒さにも弱い
熱と同様に精子は寒さにも弱いです。
精液検査は基本的には病院内やクリニック内で行います。
しかし、仕事や都合で無理な場合は、自宅で精子を採取して持っていくのですが、時間の経過と共に精子の状態が悪化していきます。それは自宅での精液検査キットも同様です。
精子は冷えると傷ついて弱っていきます。弱ることで精子のDNAにも影響が及んでいきます。
この精子のダメージは見た目では確認できません。精子は温度変化に十分注意して取り扱う必要があります。
それ故、温度変化による潜在的な精子や胚のDNA劣化を防ぐために、培養士の方にはスピードが求められています。
精子が熱に弱い原因の根拠
精子が熱に弱いことを証明する論文がいくつかありますのでご紹介します。
長時間の運転は精巣の温度を上昇させる
健常男性21~35歳に対して、40分歩行した後にエアコンを使用しないで160分車を運転してもらい、両側の陰嚢に温度センサーを装着し陰嚢温度と気温を計測。左右陰嚢温度は運転開始から徐々に上昇し、2時間後には1.7~2.2℃上昇。
近年のライフスタイルに長時間の車の運転があり、運転の姿勢が陰嚢温度を上昇させる可能性が指摘されています。
フランスの研究では、仕事上毎日3時間以上車の運転をする男性は、妊娠するのに長期間を要するというデータがあります。
イタリアでは、タクシー運転手は正常形態の精子が少ないという報告があり、ハンガリーでは、不妊症のカップルには運転手が多く、運転年数に比例するとされています。
運送業の男性は精子運動率が低く、精子数も少ないことが知られています。
膝上でノートパソコン使用は精巣温度を上昇させる
健常男性21~35歳に対して、両側の陰嚢に温度センサーを装着し温度を計測。室温は22℃、衣服は同一のカジュアルウエアとし、60分コースを2セット(電源ON or OFFのノートパソコンを膝に置く)、それぞれ異なる日の同一時刻に測定。
左右陰嚢温度は電源ON(2.6~2.8℃)、OFF(2.1℃)にかかわらず上昇し、電源ONで高いという結果でした。
ノートパソコンから発する熱のみならず、座位により陰嚢温度が上昇します。
ノートパソコンによる陰嚢温度のさらなる上昇が、精子形成に悪影響を与える可能性があります。
ブリーフは精巣温度を上昇させる
各種下着着用による陰嚢温度の違いを検討。健常男性に対して、両側の陰嚢に温度センサーを装着し温度を計測。室温は20℃、全員1日の同一時刻に測定を開始し、シャツとズボンは身体にフィットした綿に統一。
陰嚢温度はタイト下着>ルーズ下着>下着なしでした。
下着の種類による温度差が発生しますので、できるだけゆったり目の下着が良いとされています。
サウナは精子を悪くする
精子が熱に弱いことが理解できたと思います。
それ故、サウナを長期間利用することは精子を悪くさせます。
サウナに長期間(数か月)通った男性の精子を調べると、精子数と精子運動率が大幅に減少していることがわかっています。
ホルモン値への影響はありませんでしたが、DNA,ミトコンドリアの損傷が認められ、熱や低酸素の際に活性化する遺伝子群が増加してしまいます。
この遺伝子群は身体や細胞を守る遺伝子群なのでサウナで温度が高まることで一時的に遺伝子が活性化されると考えられます。
風邪やインフルエンザによる高熱はサウナと同様の結果を引き起こしますので注意が必要です。
精巣温度はどれくらいがベストか?
精巣機能は精巣温度が体温の2~4度低いことが望ましいと報告されています。
高温が精子形成障害になることは、精策静脈瘤や停留精巣で証明されています。
陰嚢温度の上昇は発熱性疾患(風邪やインフルエンザ)、停留精巣(腹部内に精巣がある状態)、職業上の高温作業(運転など)、熱風呂、サウナ、タイトな下着、運転手、おむつなどで認められています。
これらは男性不妊の原因に繋がりますので思い当たる男性は考えた方がいいと思います。
高熱を回避する方法とは?
熱が精子に影響を及ぼし男性不妊に大きく関わっていることが理解できたと思いますが、では高熱を回避するにはどのような方法があるのでしょうか。
熱がでる原因は、ほとんどが感染症です。37.5℃以上あれば発熱と考えてください。
しかし、体温には個人差がありますので、普段から平熱を測っておきましょう。
水分摂取
小さなお子様であればあるほど重要です。こまめに補給することが重要です。
あまり冷たいと逆にお腹が緩くなりますので温度にも注意が必要です。
睡眠
風邪などを早く治す方法は睡眠と栄養です。
しっかりと長時間の睡眠を心がけましょう。
脇の下や股の付け根を冷やす
氷のうや水枕、冷やしたタオルなどで脇の下や股の付け根を冷やすのが効果的です。
血液がドクドク流れるあたりが効果的です。そこは血流がたくさん巡っている場所なので冷やすことで冷えた血流が全身を回って温度を下げてくれます。
おでこのみ冷やしても、本人が気持ちがいいだけで熱を下げる効果はありません。
熱の放出
熱が上がってくる時は寒気がありますので、掛け物を多めにしますが、熱がピークを迎えると汗をかき、熱を発散しようとしますので、汗をかき始めたら掛け物を少なくしたりして熱を発散しましょう。
解熱剤や風邪薬
大人の場合は薬の服用で熱を下げましょう。一時的な服用なら何も問題ありません。ただし、継続服用には注意が必要です。
頭痛などの場合は継続して服用することになるかと思いますが、解熱作用のあるイブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリン等は男性の生殖機能に影響が全くないとは言い切れないという論文があります。
中でも男の子に風邪薬を使用する場合、アセトアミノフェンは子どものシロップにも含まれていますが、継続した服用をすると睾丸に影響がでるとされていますので注意してください。
座薬も結局は同じことです。
まとめ
- 精子は特に熱に弱く、寒さにも弱い
- 幼少期の高熱によって生涯精子形成に悪影響がでることもある
- 大人の高熱の場合、精子への影響は一時的だが、妊娠を望むタイミングの前後の高熱には十分注意する必要がある
- 精巣温度は体温の2~4度低いことが精子の状態を維持する上でベスト
- 高熱が出たら脇の下を冷やすことで体温を下げることができ、解熱剤も有効だが、長期連用は逆に精子に悪影響である
熱は精子に悪い影響しかありませんが、生きていくうえで発熱をしないということは不可能に近いですよね。
しかし、危険かもと判断してすぐに対処することは可能です。あるいは、マスクやうがいによって予防をすることもできます。
現代の男性は仕事上、仕方なく精巣の温度が上昇してしまう行動や姿勢をしています。
私もこの記事を書いている最中は椅子に座っているので精巣の温度が上昇しています。
運転のお仕事をされている男性は1時間に1度、運転を止めて、外で体を動かしたりすることが大切です。
私は中学生の頃、42度という高熱を出したことがあります。
幼少期ではないので精子が少なかった原因ではないと思っていますが、40度以上の高熱を経験したことのある男性は1度精液検査を受けて、今の自分の精子の状態を確認しておくべきだと思います。
精液検査は女性の検査にくらべると非常に簡単ですので、奥様の負担が増える前に、是非確認しましょう。
参考文献