
精子に悪い薬ってあるのかな?
妊娠中に服用してはいけない薬ってあるの?
頭痛持ちなんだけど、鎮痛剤くらい使用してもいいかな?
こんな疑問にお答えします。
鎮痛剤は頭痛の時など、体の痛みを和らげてくれる一般的にも非常に利用頻度の高い医薬品の1つです。
当然私の勤めているドラッグストアでも販売していますし、毎年新しい商品が発売されるため、その都度成分を確認しています。
そんな鎮痛剤、なんと精子に悪影響があるかもしれないのです。
- 鎮痛剤が精子や男児だった場合の胎児に影響があることがわかる
- 日々の薬物服用方法に注意することで精子の質を悪化させないように注意できる
- 結果、妊娠の確率が上がり、胎児の安全確保の確率も上がる
解熱鎮痛剤の種類
鎮痛剤、頭痛薬、痛み止め。人によって様々な言い方があります。
世の中にはたくさんの種類が発売されていますが、しっかり成分を見ると商品毎で多少の違いがあります。
また主成分が違ったり、濃度の違いによって人によっては効果がある鎮痛剤と効果がないと思う鎮痛剤があります。
医薬品だけでなく個人差というものはどうしても起こります。
ドラッグストアで勤務していると大衆薬ですので、風邪薬と同じくらい個人差が出るのが鎮痛剤だと思っています。
そんな鎮痛剤の一般的な種類をまずはご説明していきます。
鎮痛剤の鎮痛成分一覧
成分 | 主な商品と特徴 |
---|---|
ロキソプロフェン ナトリウム | ロキソニンS ・医療用医薬品から一般用医薬品にスイッチされた成分。 ・片頭痛や生理痛、歯痛など、幅広い痛みに対応。効き目が比較的強い。 |
アスピリン (アセチルサリチル酸) | バファリン ケロリン ・頭痛、歯痛に良く効くが、若干胃への負担がある。 ・15歳未満は服用することが出来ない。 |
アセトアミノフェン | ノーシン タイレノール ・胃腸への負担が少なく、比較的副作用が少ない。 ・小児から大人まで服用可能。 |
イブプロフェン | イブ ノーシンピュア ・消炎鎮痛効果に優れ、胃への負担が少ない成分。 ・15歳未満は服用することが出来ない。 |
イソプロピルアンチピリン | セデスハイ ・いわゆるピリン系の鎮痛成分。15歳未満は服用不可。 ・歯痛や抜歯後の痛みなど比較的強い痛みにも良く効く。 |
エテンザミド | ナロンエース ノーシン セデス ・アスピリンと同じサリチル酸系の鎮痛成分。 ・小児(小学生以上)も服用可。 |
主な主成分が上記になります。風邪薬、頭痛薬、子供用の風邪シロップなどに含まれています。
医薬品では臓器の成長という観点から15歳が大人と子供の境目になっています。
15歳以上のいわゆる大人しか飲めなものがイブプロフェンなどになります。アセトアミノフェンは子供用シロップにも入っています。
また鎮痛成分としてインドメタシンなどのシップに含まれてる成分もあります。
鎮痛剤は男性精子に悪影響なのか?
鎮痛剤が精子に影響を与えるというのはちょっと驚く内容ですよね。
なにせ身近にある医薬品なわけですから誰でも一度は服用したことがあるはずです。
私はドラッグストアに勤務してはいますが、実は薬が嫌いですし、病院も数えるくらいしか行ったことがありません。不妊に関しては別ですが。
鎮痛剤が精子に悪影響があるとされる報告や論文をいくつか見ていきましょう。
アメリカの研究結果
アメリカの研究で、鎮痛剤が男性精子に影響し男性不妊の原因になりうると発表されました。
鎮痛剤の中で、最も有名で最も多く使用されているアスピリン・イブプロフェン・アセトアミノフェンについて妊婦が服用した場合を調べた結果、赤ちゃんが男児の場合、男児の睾丸に影響があるとの研究結果がでています。
その3つの成分の中でも一番影響が強くでたのものがイブプロフェンだったため、イブプロフェンのみを重点的に調べることになりました。
結果、生殖機能が低下する中年期のようなホルモン状態となり、生殖障害やうつ、心血管系疾患のリスク上昇に関係する症状を引き起こしていました。
若い男性が短期間のみイブプロフェンを服用した場合であれば、影響が出たとしても、確実に元の状態に戻ることができると研究者は解説する。しかし、長期間イブプロフェンを服用した場合、健康にどんな影響が出るかは分からない。
上記ではイブプロフェンのみを研究したため、アスピリンとアセトアミノフェンに関しては述べていませんが、決してアスピリンとアセトアミノフェンは問題ないというわけではありません。
実際、アスピリンとアセトアミノフェンは妊婦が服用した場合、男児の睾丸に影響が出ていますので、アスピリンとアセトアミノフェンも影響がある可能性が高いです。
鎮痛剤が精子に悪影響とされる論文
論文もいくつか見ていきましょう。
Hum Reprod 2013; 28: 1890(フランス)
大人の精巣組織あるいは性腺ホルモン産生をアセトアミノフェン、アスピリン、インドメタシンと24~48時間培養し、ホルモン濃度(テストステロン、インスリン様第3因子、インヒビンB、PGD2、PGE2)を測定し精子形成を観察。大人の精巣組織は、ホルモン療法未実施の前立腺癌の方から提供されたもの。全ての薬剤によりテストステロン産生が減少、アスピリン、インドメタシンによりインスリン様第3因子産生が減少。アスピリンにのみインヒビンB産生減少。全ての薬剤によりプロスタグランジン産生抑制作用を認めました。これらは全身性の変化を伴いませんでした。
この論文は解熱鎮痛剤として有名なアセトアミノフェン・アスピリン・インドメタシンが精子形成や男性ホルモンにマイナスに作用することを試験管レベルで示したものになります。
妊婦がアセトアミノフェンを4週間、特に妊娠初期~中期(28週まで)に摂取すると、停留精巣(出生前に腹部で発生した精巣が陰嚢へと移動することができない疾患)のリスクが上がる
特に、妊娠中期(第16~28週)に摂取すると停留精巣のリスクが上がる。マウス実験では、母マウスの胎内でアセトアミノフェンに曝された子マウスでは、校門生殖間距離減少が見られる
まだまだはっきりとした確証があるデータが多い訳ではありませんし、世界的にダメとなっているわけでもありません。
ただし、中には悪影響が認められて、大人の精子のみならず、胎児の睾丸にも影響がでていることが危険視されています。
いずれにしても、長期連用は避け、一時的な利用で止めておくことが懸命でしょう。
まとめ
- 妊婦がアスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェンを服用した場合、男児の睾丸に悪影響が出る可能性がある
- 特にイブプロフェンは長期連用することで悪影響が出やすいが、服用を辞めると元に戻る
- 一時的な服用であれば問題ない
- 鎮痛剤成分が精子形成やホルモン低下を招く恐れがある
短期間の服用であれば一時のことですので精子への影響はあまり考えなくていいと研究者は述べています。
ただ、長期服用の場合はどのような影響がでるのかわからないわけですので、鎮痛剤の連用はできるだけ避けた方が、これから妊娠を望む男性はいいでしょう。
かといって頭痛持ちの人は痛みを我慢するべきではないと考えます。
痛みというものは我慢するべき類のものではありません。
店頭接客でも本当に痛くてなんとかしたいと嘆いている顔を見るとなんとかしてあげたいと心から思います。
鎮痛剤の服用とそのタイミングを見極めて、付き合っていく必要があります。
正常な精液所見の男性の場合はまだしも、精液所見が悪い男性の場合、このようなちょっとした男性不妊への影響も回避していかなくてはいけません。
私のように精子数50万で運動率30%だった場合、もしかすると致命傷になるかもしれませんから。
参考文献