
お酒を飲むことは妊娠にはいけないことなのでしょうか?
アルコールが精子や妊娠にどう影響するのか知りたい。
お酒を辞められません。お酒が原因で妊娠できないのでしょうか?
どれくらいならお酒を飲んでも大丈夫ですか?
こんな疑問にお答えします。
男性不妊の原因を調べるとその一つにアルコールがでてきます。
ではアルコールは精子にどのような影響があるのでしょうか?
- アルコール・お酒が精子や妊娠にどう影響があるのかがわかる
- 適量のお酒の量を知ることで不妊原因を回避することができる
- 結果、妊娠の確率が高まる
これから子供が欲しい旦那様やその奥様はアルコールが妊娠にどう関わっているのか理解を深めていきましょう。
アルコールは男性の生殖機能に影響を与えるのか?
最初から結論を言います。アルコールは適量であれば飲酒しても男性機能や精子にさほどの影響はありません。
安心しましたね。
しかし、適量での話です。ここが重要になります。
アルコールが精子に及ぼす影響
過度の飲酒は精子の生産を低下させてしまいます。
アルコールの主な作用として、テストステロンの分泌を低下させます。テストステロンとは男性ホルモンのことです。
そしてテストステロンの分解とテストステロンからエストロゲン(卵胞ホルモン)への転化を促進させます。
これにより過度のアルコール摂取は性欲が低下してインポテンツの原因になってしまうのです。
精子の量が減少するだけでなく精子の運動率にも影響がでてくると考えられています。
アルコールが精子に悪い理由
では何故アルコールが精子に悪いのか見ていきましょう。
アルコールは体内に入ると、その大部分が肝臓で分解されます。
ところが男性の体内には、もうひとつアルコールを分解する酵素があるのです。それが精巣です。
そのため飲酒が過剰になると、精巣の中にアルコールを分解する過程で発生してしまうアセトアルデヒドという物質が多量に蓄積されてしまうことがあります。
このアセトアルデヒド、アルコール問題研究所による報告によれば、とても毒性が強く、精巣内にたまってしまうと精子をつくる力を奪ってしまい、男性ホルモンの合成を邪魔することがあるそうです。
また上記でも説明した通り、性欲の低下とインポテンツの原因になります。
アルコールの適量とはどれくらいか?
それではアルコールの適量は大丈夫ということですがその適量とはどれくらいの量を指しているのでしょうか?
厚生労働省の飲酒のガイドラインを見ていきます。
厚生労働省は「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20グラム程度である」と定めています。
1日の飲酒量の目安のアルコール20グラムは日本の基準飲酒量の1単位に相当します。
ただ、これだけではどれくらい飲めるのかよくわかりませんよね。
お酒の種類によって、アルコール度数が異なりますので、アルコール20グラムというのはどれくらいの量なでしょうか?
アルコール量(g)=アルコール度数 x 飲酒量(mL)x 0.8ですので、1単位の目安は以下になります。
- アルコール度数5%のビール 500mL(1缶)
- アルコール度数5%の缶酎ハイ 500mL(1缶)
- アルコール度数12%のワイン 208mL(1/4本)
- アルコール度数14%の日本酒 178mL(1合)
- アルコール度数20%の焼酎 125mL
- アルコール度数40%のウイスキー 62.5mL(ダブル1杯)
思ったよりも飲めますよね。
さらに厚生労働省は休肝日(飲酒しない日)を週に2日と提案しているので週に5単位飲酒は適量内であると言えます。
アルコール摂取は影響しないとされる論文
上記では適量であれば問題ないと書きましたが、実際はまだ不明確な部分もあって定かではないのです。
では影響がないとされた論文を見てみます。
欧米8カ所から8344名の健常男性の精液所見とホルモン値を測定し、ライフスタイルに関する調査を行った。アルコール消費に関しては直近の1週間です。パートナーが過去に妊娠したことのある1872名(18~45歳)と若年男性6472名(18~28歳)で検討。
結果、アルコールの消費量によって精液所見には有意な変化が認められなかった。だた、アルコール多量摂取の男性(週20単位以上)は、アルコール中程度摂取の男性(週に1~10単位)に比べて男性ホルモンであるテストステロンが有意に高くなっていました。
この結果だけを見ると男性には嬉しい論文ですね。
しかし、あくまで直近の1週間の精液所見とアルコール消費量を調べたものですので、長期的な飲酒や度を越えた量の飲み方の影響は定かではありません。
さらに欧米人と日本人では遺伝子に違いがありますのでそのまま鵜呑みにすることも避けた方がいいかもしれません。
アルコール摂取と体外受精の成績
体外受精の治療成績では少ない摂取量でも影響を及ぼすとの報告がなされているので注意が必要です。
体外受精に臨む2545組のカップルを対象にアルコール摂取量と4729周期の治療成績との関係を調べたアメリカの研究によると、週に4drinks以上のアルコールを摂取する女性は、それ未満の女性に比べて、出産率が16%低く、女性も、男性も週に4drinksのアルコールを摂取するカップルは、どちらもそれ未満しか飲まないカップルに比べて、出産に至る確率は21%、受精率が48%低かった。
アメリカの1drinkはアルコール14グラムです。
この論文で体外受精の治療成績に影響が認められた4drinksというのはアルコール54グラムのことを意味しているので、日本では2.7単位ということになります。
体外受精の治療成績の場合は少量でも影響を及してしまいます。
まとめ
- アルコールは適量であれば男性機能や精子に影響はさほどない
- 過度のアルコール摂取は精子の生産を低下させ、精子の運動率を低下させ、性欲の減退、インポテンツの原因になってしまう
- アルコールを分解する酵素が精巣に集まっている
- ただ、体外受精に関しては少量のアルコールでも影響が出るとする報告があり、体外受精を控えている人は飲酒すべきではない
以上はあくまで性のアルコール摂取が生殖機能に及ぼす影響になりますので、女性の場合は違います。
お酒はもともと少量であれば毎日継続することは身体にいいとされています。
日本でいう養命酒がそれに当たりますね。養命酒はお酒です。知らない人もいるかもしれませんが、養命酒を飲んでの運転は飲酒運転ですからね。
少量のお酒は身体の体温を高め、代謝を良くします。しかしそれは適量の範囲内での話です。
過度の飲酒は男性機能だけでなく様々な部分へ悪影響を及ぼします。楽しむ程度の飲酒を心がけるべきと考えます。
アルコールと同じく妊娠に悪いと言われているものの1つにカフェインがあります。コーヒーが妊娠や流産に与える影響についてはこちらで説明しています。
参考文献