
- 顕微授精の妊娠率が知りたい
- 顕微授精と体外受精の違いって何?
- 顕微授精と体外受精で成績に差はあるの?
こんな疑問にお答えします。
- 顕微授精の成功確率がわかる
- 顕微授精と体外受精の違いがわかる
- 2つの体外受精の中身や結果を知ることで選択すべき不妊治療がわかる
顕微授精とは?
人工授精、体外受精、顕微授精はいずれも生殖医療ですが、その内容は全く異なります。
人工授精は体内での受精を試みますが、体外受精と顕微授精は体外での受精を試みるものになります。
体外受精とは、精子と卵子を体内から取り出して、体の外で受精させる治療法です。
受精卵を、ある程度安定するまで培養したあと、女性の体内に戻して妊娠に繋がるようにします。
体外受精を成功させるための要因はいろいろありますが、中でも妊娠に適した状態に成熟した卵子をいかにタイミング良く採取するかということが重要な要素の1つになります。
受精の方法には2つあり、1つは卵子に精子をふりかけてシャーレ内で自然な受精を待つ方法です。これがいわゆる体外受精(IVF)と呼ばれています。
そしてもう1つが顕微鏡を使って直接卵子に精子を注射する方法があり、これを顕微授精(ICSI)と呼びます。

体外受精=顕微授精のイメージを持つ人が多いかと思いますが、少し方法が違うのです。
そしてこの顕微授精は不妊治療の最後に残された生殖医療になります。
顕微授精の成功確率
日本において、全国の顕微授精の平均成功確率は21.5%ほどとなります。
あくまで平均であって、病院やクリニック等によってはその確率は当然前後します。

体外受精よりも多少確率は低いです。
経験が豊富な医師や、設備が整っている病院ではその確率は高くなりやすい傾向があることはありますが、ご夫婦が治療を受けやすい環境や距離であることが重要です。
体外受精の場合、自然妊娠や人工授精と違い、複数の卵子を使用するため、多胎妊娠の確率が高くなります。
多胎妊娠とは双子や三つ子などのことですが、胎児数が多くなればなるほど母体の妊娠合併症率や早産率が高くなります。
高い妊娠率を得るためには複数個の分割卵を移植しますので、多胎妊娠になる率は15%~20%と自然妊娠に比べ高い率となります。
また異常児、奇形児のリスクが多少高まります。
自然妊娠の場合でも染色体異常や先天性異常は1~2%に認められますが、体外受精の場合、大きな差ではないものの2~3%程度と約2倍にもなります。
このことは実は医師側から伝わる機会というものは非常に少ないと思ってください。
あまり知らされない内容になります。
さらに、顕微授精も体外受精同様に、年齢によってその成績等に影響が多大に出ますので、年齢を重ねたら顕微授精をするというのではなく、若い年齢から顕微授精へ移行することが妊娠出産の確率を高めることに繋がります。
≫≫妊娠の確率・流産の確率どれくらい?まとめ【妊娠率を上げる方法】
顕微授精と体外受精の違いにはどういう点があるのか?
体外受精と顕微授精どっちを選択すればいいのかで悩むご夫婦は非常に多いかと思います。
それぞれでメリット、デメリットがあり、値段にも違いがありますので当然です。
体外受精と顕微授精の違いをまとめました。
治療費の違い
まずは気になる費用の違いからです。
当然治療をする病院やクリニックによって違いがありますし、保険は適用外になります。
体外受精は20万~50万程度の金額が相応です。
顕微授精の場合は40万~70万程度の金額が相応となります。
大きな病院や有名医師、専門医がいる場合はそれだけ高くなる傾向にあります。
この金額の差に見合うだけの違いがあるのか見ていきましょう。
メリットの違い
それぞれのメリットを比べてみましょう。
- 顕微授精より自然に近い授精となる
- 技術があまりいらなく容易
- 動いている精子が1匹でも見つかれば無精子症でも授精可能
- 授精障害がある症例であっても受精が可能
できるだけ自然妊娠に近い状態を希望するご夫婦も当然いらっしゃいます。
その場合は顕微授精より体外受精の選択となるでしょう。

体外受精の場合、受精の確率は高く、7割と言われていますが、問題は母体へ戻してからの経過となります。
顕微授精のメリットである2つは非常に不妊患者にとっては希望となる内容です。
無精子症の場合、とにかく生きている精子1匹でも見つけることができれば、そこから授精も可能なのです。
これはとてつもなく大きなことだと思います。
また授精障害、例えば抗精子抗体などの場合、人工授精などでもかなり厳しい場合が多いので、顕微授精の選択になります。
≫≫抗精子抗体でも妊娠は可能か?【原因・割合・治療・いつできるのか】
近代は卵子や精子を凍結保存して、タイミングを図って顕微授精を行う夫婦が年々増加しているそうですが、タイミングを遅らせるということは年齢が増加しているということになります。
例え体外受精であれ、顕微授精であれ、年齢が若い方が成功確率が格段に高くなりますので、来るべきタイミングであったとしても必ずしも成功となるわけではありません。
そしてその結果、日本は世界で最も妊娠できない不妊治療を行う「不妊大国」と呼ばれるようになってしまったわけです。
デメリットの違い
それぞれのデメリットを比べてみます。
- 授精障害がある場合の受精率が低くなる
- 精子数が極端に少ない場合は受精しない可能性が高い
- 授精に技術が必要であり、やや高額となる
- 人工的な授精であるため、未知なるリスクの可能性もある
授精障害というのは、例えば抗精子抗体などの場合になりますし、精子数が極端に少ないというのは超高度乏精子症と言われる場合を言います。
金額に関しては人によっては継続できない額ですので保険適用を期待したいところです。
ちなみに、ここ数年では顕微授精の件数が格段に伸びており、体外受精よりも高額であっても顕微授精を選択するご夫婦が多い状態です。

デメリットとメリットを天秤にかけてしっかり夫婦と医師で相談することが重要です。
男性不妊因子の有無による結果の違い
これは重要です。
簡単に言うと、男性側に不妊原因がある場合とない場合で結果が異なっており、体外受精と顕微授精で違いが生じているわけです。
体外受精と顕微授精の結果比較(男性因子がある場合) | |||
体外受精 | 顕微授精 | ||
移植に至らない率 | 13.60% | 6.30% | |
移植した中での | |||
着床率 | 25.60% | 25.50% | |
妊娠率 | 47.90% | 48% | |
出産率 | 39.30% | 39.90% |
これは体外受精と顕微授精の結果を比較したものですが、男性因子がある場合、つまり男性に不妊原因がある場合の数値になります。
体外受精で移植まで至らない確率が有意に高くなっていますが、これは受精しなかったり、分裂が上手く起こらないということが考えられるのですが、移植した中での着床率、妊娠率、出産率を比べてみてください。

その差がほとんどないことがわかります。
つまりこの結果から、男性因子がある場合は、顕微授精の方が成績が良いと判断できることになります。
体外受精と顕微授精の結果比較(男性因子がない場合) | |||
体外受精 | 顕微授精 | ||
移植に至らない率 | 8.00% | 8.20% | |
移植した中での | |||
着床率 | 25.20% | 23.00% | |
妊娠率 | 47.90% | 45% | |
出産率 | 39.20% | 36.50% |
次にこちらは体外受精と顕微授精の結果を比較したものですが、男性因子がない場合、つまり男性に不妊原因がない場合の数値になります。
移植に至らない確率はほとんど変わりありませんが、着床率、妊娠率、出産率に関しては体外受精の方が多少成績が良いことがわかります。
それなら男性因子がない場合は体外受精を選択するべきかについてはなんとも表現しずらくはっきり断言はできないという意見が多くを占めています。
いずれにせよ、男性不妊因子がある場合は顕微授精を行った方が成績が良いということは言えるということです。
このような経緯からも分かるとおり、精子の状態というのも妊娠を目指す上で非常に重要になり、男性不妊という言葉も次第に認知されてきていますがまだまだです。
300万ほどかけて不妊治療をしたけど授からず、3年後、旦那側を調べたら男性不妊だったというケースも稀ではありません。
こういうことにならない為にも、精液検査は早めにやらなければいけませんし、そういう時代になっています。
≫≫まず精子を調査!【精液検査の方法と費用】今や自宅で出来るキットも
まとめ
- 顕微授精は卵子に精子を直接注射する人工的な体外受精であり、近年増加傾向にあるのは顕微授精となっている
- 顕微授精の成功確率は21%前後であり、体外受精より成績は多少低い
- 多胎妊娠の確率が15~20%増加する
- 異常児、奇形児のリスクも増えることはあまり知られていない
- 体外受精と顕微授精では金額、メリット、デメリット、精液所見による結果の違いがある
費用があまりにも高額なため、なかなかこのステップに上げる勇気がでないかもしれませんが、それは至極当然です。
でも想像してみてください。
男性側が検査を渋ったあげく、無駄に治療費を使い、時間もお金も無駄にして、気が付いたら奥様が妊娠しずらい年齢に突入していたなんてケースがあなたに降りかかったらどうですか?
怖くありませんか?
不妊治療は絶対に早い方がいいです。
体外受精はいずれも20代後半から30代前半の成績が良いことからも早目の行動が成功へのカギと言えると思います。