
- これから初めての人工授精を控えているので注意点など教えてほしい!
- 人工授精ってどんな流れで進むのですか?
- 人工授精はどれくらい時間がかかりますか?
- 人工授精1回目で妊娠することは可能ですか?
- 人工授精の妊娠率を上げるためにできることはありますか?
こんな疑問にお答えします。
そもそも、勘違いしている人が非常に多いのでズバッと言いますが、人工授精だからといって妊娠率が格段に上がることはありません。
パーセンテージだけで見ると自然妊娠より格段に成功率は悪いです。
その理由は後述しますが、人工授精を行おうと決心するまで、夫婦によってはもしかするとかなりの時間を要したりするかもしれません。
まずはステップアップを決断した自分たちを褒めてあげてください。
そして、人工授精という全く未知の生殖医療をこれから行おうとしているわけですから、不安や怖さがあって当然です。
ここら辺を一緒に解消していきましょう。
- 人工授精1回目の妊娠率や成功率がわかる
- 人工授精を行う際の注意点や成功率を上げる方法がわかる
- 知識を持って臨むことで、結果的に妊娠の確率が高まる
知らずに行う場合と、知ってから行う場合は全く違う結果になりえます。
まず人工授精を行った場合、6回目までに妊娠を目指す必要があります。
なぜなら人工授精6回目までに95%が妊娠するというデータがあるからです。
≫≫人工授精の確率は何%?【妊娠率の統計から辞め時は〇回である】
それ以上続けても妊娠率は上がらず、結果的にさらにステップアップして体外受精や顕微授精が提案されることでしょう。
いいですか、ですから6回目までが勝負です!
この間に必ず妊娠を目指しましょう!
人工授精と成り得るケース
妊娠を目指してからどれくらいの月日が経ちましたでしょうか?
人工授精をすることになったということは、何かしらの不妊原因があったということだと思います。
男性の中には奥様に言われるがまま、レールの上に乗っているだけの状態でここまでたどり着いた方もいるのではないでしょうか。
しかし、ここからは無関心ではいられません。
何故なら、人工授精になったということは、その多くは男性であるあなたに原因があるからです。
- タイミング法や通常性交渉では妊娠しずらいケース
- 軽度の男性不妊のケース(精子が少ない、運動率が悪い等)
- 性交障害・射精障害
- 女性の頸管粘液不全
- フーナーテスト不良
上記が人工授精になる主なケースですが、その多くは男性側が原因であることがわかるかと思います。
ここ最近ではセックスが嫌いとか、面倒くさいという理由で人工授精を行う夫婦も増えていると医師が話しているのを聞いたことがあります。
そういう時代なのでしょう。これはケース1の事例に当てはまります。
ケース2の場合は精子力の低下が原因です。
精子の数が少なく、精子の運動率が低い状態という場合です。
検査項目 | 下限基準値 |
---|---|
精液量 | 1.5ml以上 |
精子濃度 | 1500万/ml以上 |
総精子数 | 3900万/射精以上 |
前進運動率 | 32%以上 |
総運動率 | 40%以上 |
正常精子形態率(厳密な検査法で) | 4%以上 |
白血球数 | 100万/ml未満 |
この表はWHOが定めている精子の基準値・正常値です。
この数値を目安にして、下回っている場合、男性不妊であると判断され、内容によっては人工授精や体外受精への提案がなされています。
ケース3の場合はEDや奥様とのセックスで射精ができない場合にあたります。

ケース2と3の場合がほとんどだと思いますが、そういう私は2と3同時でした。
ケース5のフーナーテストとは精子がしっかりと子宮内に侵入できているかを確かめるものですが、フーナーテストが不良等の場合はケース2の精子力が低下していることが多いです。
フーナーテストに関しては、フーナーテスト検査前と検査結果の疑問徹底まとめ【妊娠を諦めるな】で詳しく説明しています。
もちろん、女性側が原因であることもありますので、ご夫婦二人の検査はまずしっかり行った方が良いです。
最近では忙しくてセックスをする気力がないというケースも増えてきているため、人工授精へ進む夫婦が多いのですが、人工授精をする為に通院や採精がままならないというケースまであるそうです。
初めて人工授精をするあなたへ
人工授精、不安ですよね?とても気持ちはわかります。
私も初めての人工授精は不安で緊張しました。
しかし、安心してください。1度経験してしまえば「え、こんなもんなの?」と拍子抜けするかもしれないほど簡単です。
今までまったく知識がない男性は人工授精=注射器で精子を卵子に刺して入れる医療行為と勘違いしている人もいるのではないでしょうか?
その医療行為は人工授精ではなく、顕微授精と言います。体外受精ともまた違うのです。
人工授精というのは、男性がマスターベーションで射精した精子を、人工的に女性の膣内に注ぎ込んで、子宮内への侵入を確実なものにする医療行為であって、非常に自然妊娠に近い生殖医療となります。
不妊治療にはたくさんの壁があるのですが、この人工授精へのステップアップも最初の壁の1つではないでしょうか。
女性の場合は当然あるとして、男性であってもこの自然妊娠ではなく人工授精で妊娠を目指すという行為に抵抗がある人は多いです。
私たち夫婦も初めはもちろん自然妊娠を目指してタイミングを計っていましたが、蓋を開けてみたら私の男性不妊が判明して、自然妊娠どころではなくなっていました。
不妊原因があると分かると、色々と考えさせられるものです。
そこで将来、子供がいない未来を2人で話して想像していると、心から怖くなりました。
その怖さに比べれば、生殖医療で妊娠を目指すことへの不安なんて小さなことと思うようになったのです。
気が付けば私たちはとにかく子供が欲しいという気持ちになっていて、人工授精だろうがなんだろうが構いませんでした。
あなたもこれから初めての人工授精を行うと決心したわけですので、最初の壁は越えることができたのでしょう。
今では不妊治療を行っている夫婦が非常に多く、20人に1人は体外受精で生まれている計算になるほどです。
あなたが不妊治療を行っていることを大々的に周囲へ言う必要はありませんが、治療を行っていることは決して珍しいことではありませんし、おかしなことでもありません。何も負い目を感じる必要はないのです。
人工授精の流れ
人工授精の基本的な流れを説明していきます。
もちろん、病院等によって多少の違いはありますが基本的には同じです。
- 女性の排卵日予測
- 予測から人工授精日を医師が判断
- 人工授精予定当日に男性が射精
- 女性の膣内へ精子注入
基本的には上記流れになります。
女性によっては一定周期で排卵が起こらない人もいますので、排卵予測をしないことには人工授精もできません。

人工授精といってもいつでもいいわけではなく、排卵していないとできませんからね。
できるだけ狙った日辺りに排卵を促すので、女性は内服や注射などによって排卵を誘発したりと非常に大変な場合もあります。
排卵の予測や卵子の育ち具合などから医師がタイミング日を予測します。
問題はその日、そのタイミングにご夫婦が合わせることができるかが重要です。
仕事や家庭行事などで多忙かもしれませんが、1月に1度しか行えないかもしれない排卵は重要度は上の方になるはずですので、しっかりと二人で相談して進めましょう。
そして、男性が唯一頑張るところ、人工授精当日です。

頑張るといっても射精するだけなので女性の足元にも及ばないほと楽でしょう。
採精方法は2種類でして、1つは直接病院へ行ってメンズルームで院内採精を行う方法と、もう1つが自宅でカップに射精して奥様に精子を2時間以内で届けてもらう方法です。
院内採精の場合、射精から時間が空きませんし、日光や温度での影響を受けませんし、何より夫婦で人工授精を受けれるというのが一番のメリットでしょう。
自宅採精の場合、忙しい中でも人工授精ができますが、距離によっては射精から時間が経ってしまって精子の質に影響したり、奥様に「なんで私一人でこんな大変なことを・・」と精神的に負担がのしかかるでしょう。

私の場合は、人工授精の日は必ず院内採精で行っていました。
できれば院内採精で夫婦で行くのがベストと考えます。
人工授精にかかる時間はどれくらい?
1時間半程度です。
もちろん病院や時間帯、混み具合にもよるでしょう。
射精した精子を人工授精する場合、濃縮する処置を行うのですが、いわゆる精子の準備に1時間ほどかかります。
稀に濃縮しないところもあるそうですが、今では濃縮する病院が多くを占めているので、もしあなたが受けている病院が濃縮しないのであれば、別の病院を探すのも手かもしれません。
精子の準備ができ次第、女性側の膣内に注ぎ込むわけですが、ものの数分で終わります。
ただ、その後すぐに動くのではなく、そのままの状態でしばらく待たされるそうです(もちろん、見れませんので妻談です)。
精子が少しでも到達しやすいように、体制や時間をもらうといったイメージですね。

ちなみに精子はものの15分で子宮までたどり着くそうです。
ですので、合計すると1時間半程度となります。
この1時間の準備時間があるので、私たち夫婦は、私が先について採精して、その後妻が来るのを待ち、処置が終わったら二人で帰るという流れにしていました。
当然慣れてからですが、慣れるほど行うのも嬉しい事ではありません。
人工授精1回目の成功率・妊娠率
まず人工授精で真っ先に気になるのはその成功率や妊娠の確率ではないでしょうか。
通常の自然妊娠の確率は年齢にもよりますが20代の場合20%ほどとなり、人工授精の場合は20代の場合11%程度となります。
こちらは人工授精の成功率を年齢別にしたグラフです。
人工授精は自然妊娠に近い生殖医療ですが、そもそも妊娠確率が自然妊娠よりだいぶ低いことに驚く人もいるかもしれません。
これは人工授精を行う場合は、何かしらの不妊原因がある場合になりますので、不妊原因があることを考慮すると、上記確率であることは決して低い数字ではありません。
次に人工授精の回数のデータです。
人工授精1回目で妊娠する確率は実に36%にも及びます。
円グラフを見ればわかりますが、最も成功率が高いのがこの1回目になります。
ですから1回目を終えた場合、最も妊娠が期待できますので、ウキウキしながら毎日を過ごしてください。
ただし、当然上記数値になるには精子の状態や数が十分であることが前提です。
精子の質が十分でない場合はさらに確率が低下することは言うまでもありません。
妊娠の確率等については、それ知りたかった!妊娠の確率・流産の確率まとめ【妊娠は確率論】で詳しくまとめています。
人工授精1回目が失敗した場合
落ち込んではいられません。
妊娠が可能な期間は1か月に1度しかありません。1年でたった12回しかないのです。
のんびり構えているとあっという間に奥様が妊娠できる年齢を過ぎてしまう可能性もありますし、数か月後は公私ともに多忙になり不妊治療を行える状況ではないかもしれません。
不妊治療はとくかく早目に!これに尽きます。
人工授精では、射精精液をそのまま使用することはあまりありません。自然な性行為では精液の大半は外にこぼれてしまい、子宮に進入するのは元気な精子だけとなります。
人工授精ではこの自然な過程を再現するために、精液を人工的に処理する精子洗浄濃縮法を行います。
また元気な精子だけをピックアップして受精率を高めることも、精子洗浄濃縮法の重要な目的となります。
つまり濃縮することで、生きて子宮まで到達できる可能性がある精子を送り込めるというわけです。
しかし、人工授精を行っている時点であなたの精子に何かしらの原因がある場合が多いわけです。
精子の数が少なかったり、精子の運動率が悪かったりすると妊娠確率は低下します。
人工授精を行う際、精子濃縮後の数や運動率を教えてくれる病院・クリニックが多いと思いますが、できるだけ奥様から精子のステータスを聞き出すようにお願いをしておきましょう。
そこでの情報は非常に重要でして、内容によって次回何を改善すればいいのか、現在精子はどういう状況なのかがわかりますし、対策もある程度立てることが可能です。

対策は下に記しておきます。
人工授精1回目が流産した場合
流産は妊娠を目指してる人にとっては聞きたくない言葉だと思います。
しかし、妊娠の7分の1は流産で終わることも事実です。
流産については、年齢・妊娠週数・人工授精・体外受精の流産確率【11種の流産と原因】でまとめています。
しかし、流産したということは妊娠の可能性があるということ。
男性側に原因が多くあることで選択された人工授精でも妊娠を目指せるということがわかったということです。

落ち込む必要はありません。
初期流産はその多くが染色体異常が原因ということが判明していますので、ご夫婦がどうとか、どっちが悪いとかではなく、着床した時点で流産が決まっていたということです。
しかし、流産は今まで女性側の染色体異常が原因と言われていましたが、精子DNA損傷によるダメージが原因で流産の確率が高まることが判明してきています。その割合、実に50%近く。
ですから、これ以上流産の確率を高めたり、繰り返さない為にも、精子のDNAダメージを抑える必要があります。
精子の奇形率を下げ、精子の質を高めておくことが流産を回避することに繋がる可能性は大いにあるのです。
人工授精2回目に向けて取り組むべきこと
妊娠は奇跡で確率論であるとよく言われます。
1%という小さな積み重ねを続けた先に妊娠という奇跡が起こります。
妊娠することがゴールではありません。元気な赤ちゃんを無事出産することがゴールであり、またそこがスタートになるのです。
こんなところで諦めてはいけません。

では1%でも妊娠の確率を高める方法をまとめていきます。
禁欲期間は適切であったか?
まず最初に考慮すべきは人工授精に臨んだ際の禁欲期間です。

長すぎませんでしたか?短すぎませんでしたか?
初めての人工授精でソワソワするご夫婦は多く、何故だか直前に性交渉をおこなったり、前日に何度か射精してしまうご夫婦が多いそうです。
少しでも自然妊娠の気分をということかもしれませんが、場合によっては妊娠の確率を下げます。
何故なら精子の数や運動率に影響するからです。
知っている人だけ妊娠に近づく!【理想の禁欲期間は何日?】でも解説していますが、精子が少ない場合は2日~3日程度、運動率が低い場合は1日~2日程度の禁欲がベストです。
つまり、人工授精を行う1週間くらい前から精子の調整を考えていかなければいけないというわけです。
人工授精の何日前に射精をしておかなければいけないのか計算し、準備しておくことで精子の質をベストな状態にでき、人工授精に臨めるということです。
自分が何日の禁欲で精子数と運動率がバランスよく備わるのかを知っていなければいけません。
そのために、自宅でできる精液検査キットを使うことも1つの手段です。
≫≫まず精子を調査!【精液検査の方法と費用】今や自宅で出来るキットも
精子の数を増やす
最も大切なステータスの1つ、精子数です。
濃縮後の精子数が1500万以上いれば、精子がどれだけ多かろうが大した差はでません。
しかし1500万を下回った場合、数が少ないため、妊娠の確率は下がっていきます。
精子の状態は日々変化していますので一定にはなりませんが、それでもある程度の数を常に維持できる状態を保つことは非常に重要です。
精子の数を増やす9つの方法【あなたの努力で改善は可能です】を参考に、あなたに合った方法で改善を目指してみてください。
精子の運動率を増やす
精子の数と同じく、最も重要なステータスの1つである精子運動率を高めましょう。
人工授精だから運動率は関係ないというわけにはいきません。
子宮に注がれた精子が卵子を目指す為に十分な運動率は必要です。
濃縮後に運動率が大きく低下してしまうケースも多い為、初めての人工授精では精子濃度と運動率は聞いた方が今後に繋がります。
精子の運動率を上げる11の方法【自然妊娠・人工授精には超重要】を参考に、あなたに合った方法を探してみましょう。
精子の奇形率を下げる
人工授精をする際に、濃縮後の精子数と運動率を聞ける場合は多いのですが奇形率まで分かる病院はないと思います。
精液検査では奇形率を判断できます。
しかし、奇形精子は運動率が悪いことが判明していますし、受精の先体反応を起こす能力が低いことも知られています。
少しでも確率を高めるために、奇形率改善を視野にいれてもいいでしょう。
ちなみに正常形態精子100%の男性は存在しません。
精子の奇形率を下げる9つの方法【努力で正常精子形態率は改善可能】からあなたに合った方法を探してみましょう。
精子の質を高める
この質は妊娠する方法全て(自然妊娠から体外受精まで)にとって重要ではあるものの、難しい点として、質を計測する方法が基本的にはないということです。
「精子の質が良い」=「妊娠しやすい精子」と置き換えることができます。
さらに妊娠しやすい精子ということは、受精を促す先体反応が起こりやすく、流産リスクが少ないということも意味しています。
流産の半分は男性精子のDNA損傷が原因であることが判明してきていることは上述しましたが、少なくとも35歳辺りを境目に取り組むべき内容だと思います。
精子の質を上げる6つの方法【精子DNAダメージは確実に存在する】にまとめていますので、あなたに合った方法を探してみてください。
まとめ
- 人工授精は自然妊娠に近い生殖医療である。
- 人工授精は1回目で実に36%が妊娠する。
- 人工授精を行う際に凝縮した精子のステータスを必ず聞くようにすること。それにより今後の対策が立てられる。
- 流産した場合、精子DNA損傷も原因の1つと成り得る
- 人工授精2回目に向けて上記に当てはまった内容について、出来る限りのことを夫婦で行わなければいけない。
百聞は一見にしかずで、何度読もうが結局経験しないことにはよくイメージもできないことでしょう。
しかし、1度経験したらこんな感じでこんなものかと思うはずです。
想像していたよりも簡易的で簡単だったのではないでしょうか。
中にはこんなことならもっと早くやればよかったと思う人もいるでしょう。本当にその通りなのです。
不妊治療は内容が内容なだけに取り掛かりに時間をかけてしまう傾向にありますが、取り掛かってしまうと実に時間が惜しく感じていきます。
ですから不妊治療は早めに!に越したことはないのです。
不妊治療を行った先人は私も含め、皆同じ思いなのです。
あなたがた夫婦も、まだ悩んでいる段階であれば早期に行動を起こしましょう。
また、これから初めての人工授精を控えている人は、お互いに精子と卵子の準備をしっかりと行い、整えていきましょう。
そして、既に1回目の人工授精を終えたのであれば、おそらく期待せずにはいられないことでしょう。
しかし、もしだめだった場合も考えて今の時間を無駄に過ごしてはいけません。
特に旦那様は精子に良いと言われることを可能な限り行い継続していきましょう。その積み重ねが妊娠に近づきます。
私は妻が妊娠しても、安定期に入るまでずっと生活習慣の改善とサプリメントの服用を継続していました。
なぜなら、もしダメだったとしたら、ここで辞めたことで精子力が元に戻るかもしれないと思ったからです。
≫≫【私はこれで妊娠しました!】男性不妊でも妊娠できた5つの方法
精子は精巣で作られ始めてから射精までに88日もの月日を必要としますので、一朝一夕で改善できるものではありません。
ですから1度改善を決意したら妊娠し、無事出産するまで継続しなくてはいけないのです。